2018年06月16日

おいしい唐揚げを、僕と君と彼らと一緒に。

誰かよりも稼げて満足かい?それは良かった。

皆よりも権力のある人に会えたね、良かったね。

で、君は何が残ったの?

お金だけ抱えて、
特定の価値観に縛られて、
この世界を飛び出さないなんて。

いい服に良い食事、随分楽しそうじゃないか。
いいね、君が素直に羨ましいよ。

でもね、誘ってくれたのは嬉しいけれど、
君の世界に留まることはできないよ。

僕にはもっと語り合いたい人がいるから、
愛を呟きに、また玄関を出るよ。

そうだ、お皿の上の唐揚げを
何個かもらっていいかな。

あのイチョウの木下で、
一緒に食べたい人たちがいるんだ。

今日は週末だからね。
きっと彼らも仕事も休みだろう。
仕事がない連中も余計に暇してる。

君と食べきれない唐揚げを前にするよりも、
愛を呟きに玄関を出るよ。

それじゃあ、また。

もしも君が玄関を出たら、
案内するね。

あのイチョウの木の下まで。
posted by さゆり at 04:33 | 日記

2018年06月08日

隊長は泣かない人生を捨てた。


王の騎士団の隊長であるこの私が、
わざわざこんな下賤な星に生まれ変わったのには意味がある。


それはどんなに小さくても輝いて見える、
どんなに静かな声でも透き通って聴いてしまう声の王。

我が故郷の星の未来の王であらせられるからだ。


王は、
別に知らない星で
別に知り合いでない王がいる
別に知らなくていい民の苦しみを共感したいとした。


民と共に腹をすかし、
店の前でヒモジイことを泣いた王を見たとき、
前の前のことが正しい現実なのかさえ疑問に見えた。


しかし王は、
これ以上なにもできないことに耐え忍びたくないと、
民の苦しみを詠った。


私は王の歌声を聴き。震えが止まらなかった。

知らない王の姿で目の前にいる。
悲しみを背に民を励ます王がいる。

王などいらないと叫ぶ、王がいる。


嗚呼、我が故郷の王よ。

私はあなたが王となった故郷に帰りたかった。

でも、もはや、今もう。
願いごとを流れ星に叶うことすらできないのですね?


時が満ちるまで。

必死に食い止めていた夢を叶える流れ星は、
ついに別の星の願いを叶えに飛び出してしまった。


だけど。嗚呼、どうして。

もっと民のために、
王を捨てようとする歌を聴きたくなるのだろう。


私の願いと本能は交差する。

王の父は通達した。

危機を感じた王の父が
我が子を、民を従えるべき役割に就くべきであると。


二つの次元に挟まれて、身動きが取れなくなった。
そんな時、とある吟遊詩人の歌に出会った。

「この歌は好きか」

「好きだよ、どうして?」

「この声は好きか」

「好きだよ、なにがあったの?」

「この人は好きか」

「わからないな。どんなひとなの?」

「ならば、会わせよう」


詩人は私の誘導尋問にひっかかり、
まるで自らの意志で王の歌を支援するかのように。

王を志願を達成するための材料となる一因となった。


三つの次元に挟まれて、呼吸もまばらになった。
ある日、あの詩人の歌を聞いた。

「その歌は何だ」

「あなたのために作った歌だよ」

「その声はなんだ」

「あなたのために練習した声だよ」

「その脚はどうした」

「王を助けに少し険しい山を登ってきたよ」


私は発狂しそうになると、詩人はなんども歌を歌った。

残念ながら温かい愛の歌を前に気が散ることも許されず、
詩人の歌によって理性を取り戻してしまった。


王はどんどん、さらに、
愛の歌をもって民の目に灯をともした。

ついに民たちは王を捨てる気持ちに火がついた。


私たちは王がいなくなった世界が怖くて、怖くて、
王の父親と共にマントをひるがえし、おびえていた。

恐怖の中、詩人の歌が聴こえた。
前よりもずっと小さく、前よりもずっと静かに胸に響く。


異変に思わず絶望を忘れて、
扉の向こうへ駆け出して、詩人と最後の会話をした。

「私のために歌を作る時の目が好きだ」

「あなたのひたむきさが好きだったよ」

「私は理性を取り戻してしまう手が好きだ」

「あなたの少しだけ卑怯なところが好きだったよ」


詩人は最後の愛の詩を手紙にしたため、
宇宙の風が吹いたとき、飛ばした。


宇宙には吹いてなかった風が起こる。

風に舞う手紙をみつめていると、
詩人は静かに目を閉じていた。


私は隊長の肩書を下した。
そうしたら、詩人のために涙を落とすことが許されるから。

少し泣いて、少し微笑んで、詩人の手にキスをしてつぶやいた。

今度はわたしも一緒に歌おう。


posted by さゆり at 00:27 | 会長と詩人シリーズ

2018年06月05日

王様になるはずだったあの子のうた。

わたしはなんでもない詩人。

思いつくままに旅をして、
気がつくままに詩を書き留める。

たまに譜を褒めてくれる姉たちに
愛の詩を送っている日々。


旅の中、遠い星から歌が聞こえた。

愛の歌が聞こえた。
美しくて力強くて小さな声。

わたしの譜を歌って欲しくなって、
わたしは遠い星に生まれ変わり降り立つ。

姉たちは一冊のノートを贈ってくれた。


様々な愛に触れる日々、
栄華を極める国の小さくて華奢な
王になるはずだったあの子に出逢った。


わたしの肩を掴み揺らし、
あの子は叫んだ。

こんなものでは、
こんな歌では民を救えない。

叫び続けて、縋るように救いを求めた。

救うどころか、何もかも揃うあの国へ
何を救いに戻るのだろう。


でも、もし、あなたが。

満たされないと感じるなら、
誰かを愛する心くらいかな?

何もかも王の栄光を輝くために揃えた
完璧な星に戻りたくないとしたら。

あなたの心に愛を満たせばいい。



そうだ。
あなたの心に愛を満たすために
わたしは詩を送ろう。

今すぐ。
姉たちにすら送ったことのない
愛をもっと見つけに行こう。

これから。
あなたの歌声に共感する人たちの
想いを集めよう。


王になるはずだったあの子。

歌い、進み、励みながら
たくさんの人たちの歌に囲まれて。

ついに街が1つ出来るほどに膨れ上がった。


となり星にあったあの街も
向こう星にあったその街も
彼女の愛の叫ぶ歌声に共鳴する。


王などいらない、
ここに私たちの想いをまとめた
愛を歌う人が
数え切れないほどいたのだから、と。


あの人は王を捨てて、
愛を歌い続ける。

人々は王を捨てて、
愛を歌い続ける。


わたしの命はそろそろ終わる。

少し険しい山の彼方を歩き過ぎた。


でも 最期に

面白い詩 が 書けそう だ。
姉たちは 喜んで くれる だろうか。

わたしは 詩を書き、
丁寧に封をして

宇宙の風に 届けた


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また一緒に歌おうね、町内会長さん。

posted by さゆり at 12:52 | 会長と詩人シリーズ

王様が町内会長になったおはなし。

わたしは静かで小さな王。

だれよりも静かに、
どの国の王よりも小さく。

わたしは王に、
なるはずだった。


父親たちはわたしが
遠い星に行くことを止めなかった。

小さな王だから気づいた、
民の小さな声が大好きだった。

拡声器も使わずに、
国民全土に広まっていく
心にガンガンと響く歌声が大好きだった。


親衛隊はわたしが遠い星で
生まれ変わるのを止めなかった。

あんな声になりたくて、
あんな声にどうしてなるのか知りたくて
それが王のままではわから無くて。

あんな声を持った
王になりたいと思ってしまったのだ。


遠い星で私は美しい声を持ち、
人々に歌と芝居を持って愛を励ました。

愛の忙しないなか、わたしは瞬く間に倒れた。


わたしは小さな王だから気づいた、
民の叫び声が哀しすぎたことに。

権力も使わずに
恐怖と哀しさが広まっていく
細胞にギシギシと刻む声を嫌いになりそうだ。


わたしは気づいてしまった。

あの故郷で聞いた心に響く歌声は
支配の悲しみを癒すために歌っていたことに。


民の悲しみを尋ねると
遠い星の王だった父は言った。

お前の栄光は私たちが揃えたもの。
全ては用意されたもの。
何1つ、お前が築き上げたものはない、と。


わたしは哀しみから這い上がった、
民に歌うと誓った。

わたしは王であることを捨てた。

中途半端な静かな王のささやきと
なりそこないの民の歌声で。

愛を叫び歌った。
かつて父が滅ぼした小さな村に町をつくった。


王や親衛隊は途端にマントをひるがえし、
恐怖と不安にかられて耳を塞いだ。

王が王で無くなっていく……
世界中から国境が消えて行く…


わたしの後ろにたくさんの大衆が
一緒に歌っていたのに気づいたのは、
喉枯れて歌い疲れた後だった。


わたしたちは歌い続ける。
王をなくした国に愛が満ちるまで。

わたしは王を捨てた、
王たちが去って行く街に愛を満たすため。


わたしに王など肩書きはいらない。
この町にいる間だけ、町内会長でいい。

会長と呼んでくれ、
微笑んで冗談ぽく。

王をなくして呆然とする民の中を
朝の散歩とともに愛を歌う。


ああ、またあさが来た。

また、仲間と一緒に愛を語りに歌おう。

posted by さゆり at 00:15 | 会長と詩人シリーズ
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