2018年06月05日

王様になるはずだったあの子のうた。

わたしはなんでもない詩人。

思いつくままに旅をして、
気がつくままに詩を書き留める。

たまに譜を褒めてくれる姉たちに
愛の詩を送っている日々。


旅の中、遠い星から歌が聞こえた。

愛の歌が聞こえた。
美しくて力強くて小さな声。

わたしの譜を歌って欲しくなって、
わたしは遠い星に生まれ変わり降り立つ。

姉たちは一冊のノートを贈ってくれた。


様々な愛に触れる日々、
栄華を極める国の小さくて華奢な
王になるはずだったあの子に出逢った。


わたしの肩を掴み揺らし、
あの子は叫んだ。

こんなものでは、
こんな歌では民を救えない。

叫び続けて、縋るように救いを求めた。

救うどころか、何もかも揃うあの国へ
何を救いに戻るのだろう。


でも、もし、あなたが。

満たされないと感じるなら、
誰かを愛する心くらいかな?

何もかも王の栄光を輝くために揃えた
完璧な星に戻りたくないとしたら。

あなたの心に愛を満たせばいい。



そうだ。
あなたの心に愛を満たすために
わたしは詩を送ろう。

今すぐ。
姉たちにすら送ったことのない
愛をもっと見つけに行こう。

これから。
あなたの歌声に共感する人たちの
想いを集めよう。


王になるはずだったあの子。

歌い、進み、励みながら
たくさんの人たちの歌に囲まれて。

ついに街が1つ出来るほどに膨れ上がった。


となり星にあったあの街も
向こう星にあったその街も
彼女の愛の叫ぶ歌声に共鳴する。


王などいらない、
ここに私たちの想いをまとめた
愛を歌う人が
数え切れないほどいたのだから、と。


あの人は王を捨てて、
愛を歌い続ける。

人々は王を捨てて、
愛を歌い続ける。


わたしの命はそろそろ終わる。

少し険しい山の彼方を歩き過ぎた。


でも 最期に

面白い詩 が 書けそう だ。
姉たちは 喜んで くれる だろうか。

わたしは 詩を書き、
丁寧に封をして

宇宙の風に 届けた


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また一緒に歌おうね、町内会長さん。

posted by さゆり at 12:52 | 会長と詩人シリーズ

王様が町内会長になったおはなし。

わたしは静かで小さな王。

だれよりも静かに、
どの国の王よりも小さく。

わたしは王に、
なるはずだった。


父親たちはわたしが
遠い星に行くことを止めなかった。

小さな王だから気づいた、
民の小さな声が大好きだった。

拡声器も使わずに、
国民全土に広まっていく
心にガンガンと響く歌声が大好きだった。


親衛隊はわたしが遠い星で
生まれ変わるのを止めなかった。

あんな声になりたくて、
あんな声にどうしてなるのか知りたくて
それが王のままではわから無くて。

あんな声を持った
王になりたいと思ってしまったのだ。


遠い星で私は美しい声を持ち、
人々に歌と芝居を持って愛を励ました。

愛の忙しないなか、わたしは瞬く間に倒れた。


わたしは小さな王だから気づいた、
民の叫び声が哀しすぎたことに。

権力も使わずに
恐怖と哀しさが広まっていく
細胞にギシギシと刻む声を嫌いになりそうだ。


わたしは気づいてしまった。

あの故郷で聞いた心に響く歌声は
支配の悲しみを癒すために歌っていたことに。


民の悲しみを尋ねると
遠い星の王だった父は言った。

お前の栄光は私たちが揃えたもの。
全ては用意されたもの。
何1つ、お前が築き上げたものはない、と。


わたしは哀しみから這い上がった、
民に歌うと誓った。

わたしは王であることを捨てた。

中途半端な静かな王のささやきと
なりそこないの民の歌声で。

愛を叫び歌った。
かつて父が滅ぼした小さな村に町をつくった。


王や親衛隊は途端にマントをひるがえし、
恐怖と不安にかられて耳を塞いだ。

王が王で無くなっていく……
世界中から国境が消えて行く…


わたしの後ろにたくさんの大衆が
一緒に歌っていたのに気づいたのは、
喉枯れて歌い疲れた後だった。


わたしたちは歌い続ける。
王をなくした国に愛が満ちるまで。

わたしは王を捨てた、
王たちが去って行く街に愛を満たすため。


わたしに王など肩書きはいらない。
この町にいる間だけ、町内会長でいい。

会長と呼んでくれ、
微笑んで冗談ぽく。

王をなくして呆然とする民の中を
朝の散歩とともに愛を歌う。


ああ、またあさが来た。

また、仲間と一緒に愛を語りに歌おう。

posted by さゆり at 00:15 | 会長と詩人シリーズ
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