2018年06月05日

王様が町内会長になったおはなし。

わたしは静かで小さな王。

だれよりも静かに、
どの国の王よりも小さく。

わたしは王に、
なるはずだった。


父親たちはわたしが
遠い星に行くことを止めなかった。

小さな王だから気づいた、
民の小さな声が大好きだった。

拡声器も使わずに、
国民全土に広まっていく
心にガンガンと響く歌声が大好きだった。


親衛隊はわたしが遠い星で
生まれ変わるのを止めなかった。

あんな声になりたくて、
あんな声にどうしてなるのか知りたくて
それが王のままではわから無くて。

あんな声を持った
王になりたいと思ってしまったのだ。


遠い星で私は美しい声を持ち、
人々に歌と芝居を持って愛を励ました。

愛の忙しないなか、わたしは瞬く間に倒れた。


わたしは小さな王だから気づいた、
民の叫び声が哀しすぎたことに。

権力も使わずに
恐怖と哀しさが広まっていく
細胞にギシギシと刻む声を嫌いになりそうだ。


わたしは気づいてしまった。

あの故郷で聞いた心に響く歌声は
支配の悲しみを癒すために歌っていたことに。


民の悲しみを尋ねると
遠い星の王だった父は言った。

お前の栄光は私たちが揃えたもの。
全ては用意されたもの。
何1つ、お前が築き上げたものはない、と。


わたしは哀しみから這い上がった、
民に歌うと誓った。

わたしは王であることを捨てた。

中途半端な静かな王のささやきと
なりそこないの民の歌声で。

愛を叫び歌った。
かつて父が滅ぼした小さな村に町をつくった。


王や親衛隊は途端にマントをひるがえし、
恐怖と不安にかられて耳を塞いだ。

王が王で無くなっていく……
世界中から国境が消えて行く…


わたしの後ろにたくさんの大衆が
一緒に歌っていたのに気づいたのは、
喉枯れて歌い疲れた後だった。


わたしたちは歌い続ける。
王をなくした国に愛が満ちるまで。

わたしは王を捨てた、
王たちが去って行く街に愛を満たすため。


わたしに王など肩書きはいらない。
この町にいる間だけ、町内会長でいい。

会長と呼んでくれ、
微笑んで冗談ぽく。

王をなくして呆然とする民の中を
朝の散歩とともに愛を歌う。


ああ、またあさが来た。

また、仲間と一緒に愛を語りに歌おう。

posted by さゆり at 00:15 | 会長と詩人シリーズ
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