あなたに恋する相手はたくさんいる。
私はあなたに恋する人たちの瞳を
見るのが好きだった。
あなたは一生懸命に
恋され続けようと
駆け出し走りつづけた。
もしかしたら、
私はあなたの瞳よりも
彼ら彼女たちの瞳に
惹かれていたのかもしれない。
あの子たちは
真っ直ぐあなたを見ていたよ。
曇り霧の中を貫くみたいに。
あの瞳が羨ましかった。
舞台を見ながら
横目であの子達を見ていたから、
あなたを見るのも横顔ばかり。
だけど、ほんの一瞬だけ、
正面を見たら、
あなたの唇が動いたのを見た。
(恋されるだけじゃ、つまらない)
猛烈に胸を貫いた
あなたの強くしたたかな情熱的な野心。
目の前には可愛いレースを着て
無邪気にはしゃぐあなたとは真逆。
客席の中で記憶が飛んだことは
言うまでもない。
みんなあなたに恋してる、
野心も知らずに。
私はどうしたら良い?
あなたに恋するあの子達も見ていたい。
そのために、
あなたには可愛いレースを
しばらく着ていてほしい。
あなたはどうしたい?
あなたに恋する彼ら彼女たちを
見ていたい?
なんのために舞台を立っているのか
教えてほしい。
母を愛するため?
恋された相手を愛されるため?
仲間と愛し合うため?
かろうじてもう一度だけ、
勇気を出してあなたを正面から見た。
(あたしは、あたしに夢中で恋してみたい)
野心は幻か。
自分に思い切り恋したいなんて、
こんな面白いことが
この世にあるだろうか。
野心は妄想か。
自分が誰よりも自分のファンになりたいと、
こんな真っ直ぐな視線が
地上にあるのだろうか。
あの舞台の間だけ
初めてあなたを見放さなかった。
見逃さず黒目の視野に標的を合わせ続けた。
あなたはどうしたい?
あなたの野心が本物なら、
あなたの面白くて真っ直ぐな野心を応援したい。
もっと見たい。
あなたがあなたに夢中になっていく、
あなたがあなたを好きになっていく
あなたを見ていたい。
もしもあなたが、
恋されるだけに飽きたのなら、何がほしい?
教えてほしい。
私たちはあなたの野心を、
やりたいことにこの愛を注ぐ。