2019年10月09日

愛が生まれてしまう時。

随分な犠牲を払ったけれど、
誰も何もカレモ手に入ることはなかった。

喉を枯らし歌った。

脚を壊し踊った。

恋人はあたしの抑えきれない愛に逃げた。

唯一、安息の場所であるベッドやソファ、
二匹の猫に奪われた。


手に入れたのは大きくなる舞台と
比例して虚無があたしを襲う。

あたしは虚無の中、何を間違ったのか見定め始めた。

明日はきっと意識はないだろう。
目を開けて歩いているふりして
全ての器官を閉じて生きるフリをするからだ。

抗っても無理だ。

あたしには大きくなり続け虚無が未来を防いでいる。


あたしを救うのはあたし?いいえ、違う。

あたしを救うのはあたしを愛してくれる人だけ。

たった一人でいいの、
たった一人ですら手に入らない。

泣く度に出てくる夢のあの人なら、
今の顔に笑うだろう。

気に入られようと化粧したアイシャドウが
滲んでパンダみたいになってる。


でも、こんな、迷宮入りの謎解きは、もうおしまい。

あたしは謎を放棄する。

だから眠る、きっと夢にはあの人が出てくる。
迷宮の垣根も飛び越えるあの人が…


「やっぱり君は恋した方がいいよ」
「恋人はいつも家から去っていく」
「籠に入れようとするからさ」
「一緒にいたいだけなの」
「籠に戻ってくるような家にしてごらん」
「あたしだけではダメなの?」
「あなたがいなくても、あなたを感じられるようにしてあげなくちゃ」
「何のために?」
「籠から離れたあの子が、あなたの魅力を伝えられるように」
「二人で伝え合えばいい」
「恋は気持ちが動くから、恋し続けられるものだ」
「あぁ…あたしは止まってしまっていたのね」
「恋を止めるくらいなら辛すぎて消そうとするだろう」
「あたしはあの子をほんとうに愛していた?」
「夢に描いた妄想をあの子に貼り付けていた」
「あたし、そのままを愛せる人が見つかるの?」
「強い光の中でも暗い闇の中でも、目には何も見えない」
「なら、いったい誰をあたしは愛せるの?」
「思い出すと抱きしめた体温が蘇ってくるひと。」
「そんな事分からない」
「自分の声を温める人が温かさに気付くのだから…」


抱きしめられて視界がぼやける。

部屋には誰もいない
夢と現実の狭間。

心地よい温もりを感じる布団から、
頭の中に気になる声が響く。



愛は優しさでもない。
厳しさでもない。
運命でもない。

互いが心地よいと思えたとき
突然、時々愛が生まれるものだ。

愛を生ませようとするほど遠くなり、
愛を育もうとするほど壊れていく。

互いを知ろうと好奇心が出たとき
必然、いつも愛が大きくなるものだ。



あたしはあの子を好きだったけど、
やっぱり愛してなかったんだと思う。

無理やりいつも愛を生ませようとした、
強引に相手に興味を持たれようとした。

気づいてしまったあたしには。
次の未来は誰かを愛してしまうかもしれない。

虚無の中に風が吹く。
死んだフリする予定は帳消しとなる。

まずは夢の中のあの人から、
愛を語ることをもっと当たり前にしていく。

ハッと気づくと、
寝ぼけた夢の隙間から人影が手を振った。

あなたなの?あたしがほんとうに愛せるひとは。


未来には既にまっすぐ光を照らして霧を貫いている。

謎の解き方はわからないけれど、
方向はただまっすぐ。

あとは進むだけの簡単な作業。

ひとつひとつ愛を語り、
もっともっと好奇心を込めて聴いてみるわ。

それだけであたしは、あたしごと恋人を愛せる。

3500F1AF-DA0A-4CB5-84DE-885DD213C291.jpeg

あたしは目覚めて布団から出て行くことにした。

朝日は昇っていなかったけれど、
進む道も航路もわかってる。

あとは進むだけ。


posted by ユーリー at 03:11 | 命の解放