わたしは貴女の法悦の様な
恐ろしい矢を受けました。
同時に、
同じ場で矢を受けた人々の
累々と転がり横たわる姿を見届けました。
人々の心が絶頂なる喜びで満たされて、
人々の魂が天に召すこの時を過ごしました。
ところで、
わたしはなぜ、
貴女の法悦を受けて、
倒れないのでしょうか?
今、
貴女をこれほど
恐ろしく感じたと言うのに。
貴女は己を
キューピットだと言われることを嫌う。
貴女は己を
女神と言われることを嘲笑う。
貴女はただ一人の
唯一の存在と言われるほど微笑む。
たしかに、
わたしは貴女に
突き刺された矢の返し刃に耐えました。
しかし、
視点が定まらない瞳。
震える脚。
止まらぬ胸の震え。
どこが正気を保っている様
見えるのでしょう。
この命があるだけ、
わたしは貴女と向き合うだけで
精一杯なのに。
それでも、
貴女は私の側に居て欲しいと仰る。
わたしが貴女の
唯一無二と言ってくれる人なのだと喜ぶ。
わたしが
貴女の法悦を
伝えましょう。
貴女はより多くの人々に
唯一の存在と言ってほしいのですね。
でも、
唯一と言う前に
人々は貴女によって倒れてしまった。
そして、
わたしだけ残った。
貴女の射抜く美しい姿が見たかった。
貴女に射抜かれた人々の悦楽が見たかった。
矢を引き抜く切ない貴女を見たかった。
貴女が新しい者に
矢を放つ時だけがわたしの見たい貴女になる。
貴女は、いっそのこと
たった一人で良いと言うれけど。
わたしはもっともっと、
より多くの人の胸が震える姿を
知りたいのです。

法悦の矢をこの胸から抜いた時、
矢の返し刃によって、
わたしの心臓は大きく変わってしまった。
貴女が何度射抜いても、
同じ衝撃をわたしに与えることは出来ません。
わたしは心が震えても倒れずいた。
貴女は魂から嬉しそうに笑った。
あの顔をわたしを射抜くことで
見ることは二度とできません。
ならば、
貴女の日常となり、
矢を射抜くための魂を養うための、
暖かな日々を共に作りましょう。
貴女の非日常となる、
矢を射抜いた後でも
呼吸させてあげられる方法を共に学びましょう。
そうすれば、
あの顔をもう一度見ることが
できるかもしれない。
貴女は新しい者に
矢を放つ時だけが、
わたしの見たい貴女になる。
貴女は倒れずいた
一人だけで良いと言うけれど。
わたしは
より多くの人が法悦に震える魂を見たいのです。
貴女が力の加減を覚えるまで、
わたしが人々の震える笑顔に飽きるまで、
二人の喜びがなくなるまで。
射抜かれた衝撃を思い出し、
震えながら貴女のそばにいましょう。
わたしは貴女と言う唯一の存在から、
射抜く法悦を伝えて行きます。
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