あの日見た夢を忘れられない。
不思議な光景だった。
静かな森で、安らいだ吐息の中、
戦いに疲れた人狼たちが、
小さな人間を囲っていた。
彼らは知っていた。
この人間の側にいたら、
僕らは誰かを傷付け合っていたいなんて思わない。
彼らは怖がっていた。
この人間が森から離れてしまうとしたら、
僕たちはどうしたらいいのかわからない。
小さな人間は彼らの不安を取り除く為、
祈り、まだ森から離れられない自分の代わりに私や誰かを生み出した。
彼らの心を刺激するような多種族たちも、
どうか強い力で誰かを傷つけないように。
彼らの優しさを邪魔するような古い先祖たちも、
どうか力強くいながら優しくできるように。
遠くの星まで願い事が届くように、
私たちを生み出して、
願い事を叶えようとした。
私は誰かの祈りから生まれた一人だった。
いつのまにそれは自我を持ち、
個性となり、自らも祈るようになる。
もしかしたら、私たちは数えきれないほど、
自分の願いを叶えるために、
わたしの味方を創造しているのかもしれない。
どうやら今は、
以前より自我が強くなり、
自身の願い事を叶えたくて堪らなくなっている。
でも、思い出すのだ。
この人の側にいれば、このあとどうしたらいいのか、
優しい森に似合わない誰も傷つけたくない不安と
安らいだ人狼の背を曲げた姿が。
だから、ほんの少しづつ、これも叶えていくと決めた。
何かに願い事を混ぜて伝えて想いのタネを蒔こうと決めた。
なんでもいい。挨拶でも、言葉でも、祈りでも。
暖かく、適度に湿り気のある、
柔らかい土を見つけたのなら、
植えていくのだ。
私は今の願い事を叶えながら、
いつかみた夢を思い出しながら、
我儘に纏めて願いを祈り、叶え続けるのだろう。