歌が嫌いになったわけじゃないみたい。
あの子を嫌いになったわけでもないらしい。
彼らが歌を飽きたのでもないのだとか。
新しい人に熱い応援を配りたいと、
街の外へ探しに行ってしまった。
彼らは僕の好きな歌を歌う子に耳を閉じていく。
僕たちより大きなお金を手に支援していた。
僕たちよりずっと応援の声は大きかった。
僕たちなんかより、あの子は彼らの声を聞いていた。
もうめちゃくちゃ、あべこべだ。
彼らより小さい声。
彼らより好きだよを言わない。
彼らよりあの子は僕たちのことを知らない。
全てが反転していく。
彼らは僕たちに言っていたんだ、
あの子の歌う歌詞は全部覚えているよと。
彼らは僕らに言ったことがある、
あの子に下世話な話ひとつ触れさせないと。
彼らは僕に言った、
きみと僕たちは違うんだよと。
裏返った世界にあの子が到着した。
彼らの熱に応えて燃えていたあの子の歌が冷えていく。
彼女の真新しい涼しげな歌が僕らに伝わっていく。
僕たちと彼女の間に不思議な熱量が生まれていく。
歌い終わった後、彼女が言った一言が忘れられない。
「いつかこうなることはわかっていたの。
でも、あの熱に応える熱い歌を歌ってみたかったの」
僕はたぶん、今はそう思うのだけどと曖昧に返す。
「貴女の人生に歌を聞く人が必要なら、
きっと僕たちがそれになるだけ、なのかも」
また、熱い限界を越えたくなったら、
熱い声で歌って仕舞えばいい。
きっとまた誰か、
熱い声を持つ人たちが貴女の歌を聴きに来る。
ただ私たちは貴女の歌の手のひらの上で、
踊りたたずみ、生きてるのだから。
【スピリチュアルの解放の最新記事】