応援していたマントルのアイドル、
彼女の歌声は荒々しく、彼女は感情に溢れ、
私たちの知らない感情が溢れてくるような気持になる。
あの歌声が大好きで、
多くの人に届けばいいと願っていた。
もっと共感したいと願った。
ある日、小さな黒い箱を見つける。
箱には嫉妬・劣等感・罪悪感が敷き詰まっており、
私には何が入っているのかさっぱりわからなかったのだけれど。
中身を分析する際中、
どこから聞きつけたのかマントルが止めた。
「この箱にはあたしをうらやむ人の憎悪、
あたしがアイドルをうらやんできた憎悪を集めてる。
あたしの歌には揺れる感情が必要なの。
揺れる理解する前に開けてはならない」
憎悪だけ抜いて、
揺れる感情だけ抜き出せないのかと聞くと、
一人では無理だと泣いた。
この箱がどれほどのものか、
学のない私にはわからなかったのだけれど。
追い込んで、抱え込んで、敷き詰めて、
一人で揺れる感情を独りで美しものに変えねばならないこの世界に
私は初めて憎しみを抱いた。
けど、この憎しみは決して彼女にぶつけてはならないと誓うと。
私は心に預け慣れていなかった、憎しみで脳下垂体を焼き付けた。
マントルの荒々しい歌声で細胞を焼かれていた私の身体において、
衰弱が増していくのを感じる。
マントルは、少しだけさびしそうに笑って、
「今までありがとう。
あなたがもう少し元気になってから帰ってくる」
彼女の歌声は遠くなり、
衰弱を助ける一人の乙女が私の隣に舞い降りた。
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posted by ユーリー at 02:27
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乙女たちの台詞集